概要
本書『お金の流れで読む 日本と世界の未来』の著者ジム・ロジャーズ氏は世界でも有名な投資家だ。その実績はすさまじく、ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並んで世界3大投資家と称されるほどの実績を持つ。当然ながらその慧眼は白眉であり、リーマンショックやトランプ現大統領の当選、北朝鮮の開国を予言し的中させてきた。そんな著者が日本やアジア人向けにインタビューを受け、経済的な視点から世界の未来予想を特別に語った内容をまとめたのが本書である。
本記事では著者がポジティブな予想をした国々とネガティブな予想をした国々を紹介し、全体を通して印象に残った歴史や旅の重要性について述べる。
ポジティブに予想された国々
ポジティブな予想がされていた国の1つがロシアである。特に著者が注目しているのが農業・肥料分野だ。政府に制裁を加えられているため、食料を自由に輸入ができず、内需が増加する。そして、それに伴い肥料への需要も増す。また、債務が少ないことも理由の一つだ。これらを根拠にロシアに対してはポジティブな予想をしている。
そして本書の中で著者が特にポジティブに予想しているのが北朝鮮および韓国と北朝鮮の統一国家だ。著者は教育への熱心さや人口の増加そして、外貨の流入が大きいと予想している。これらを根拠に、北朝鮮への投資を行いたいと述べている。果たして統一国家成立という予言は現実のものになるのだろうか。私にとって注目したい事象がまた1つ増えてしまった。
ネガティブに予想された国々
反対に著者がネガティブに予想していた国はアメリカと日本だ。
アメリカに対して著者はまず、トランプ大統領の関税による貿易政策を否定している。保護貿易をして反映した国は存在しないという歴史がその根拠だ。アメリカ国内のごく少数の人のために、多数の人がダメージを受けることになってしまうと非常に手厳しく非難している。また、アメリカの景気に対してもAmazonやGoogleといった一部の企業に引き上げられているだけで、その他の企業に力がないことを指摘している。
そして、我らが日本にも悲観的な予想をしている。その意見は非常に厳しいもので、「私が10歳の日本人なら日本から逃げる」と述べているくらいだ。その根拠として挙げられているのが少子高齢化である。やはり、人口が増加しているという要素は景気に対して非常に重要な要素である。それを考えるとこの意見も仕方ないであろう。
歴史と旅の重要性
本書を通じて印象に残ったのが、歴史と旅の重要性だ。中でも印象的なのは歴史は繰り返すということだ。著者のように歴史に精通していると、過去に似た事象が起こっていることや一度も成功した試しがないということがよくわかるのだろう。歴史を学んでいるからこそ、本書のように自信を持ちながら堂々と持論を展開できるのだろう。
だが、著者を決して頭でっかちの人間だと思ってはいけない。著者は世界中をバイクや車で二度も旅するという経験を持つ。そうして現地でしか感じ得ない情報というものが、投資家としての格を引き上げているように感じた。
おわりに
本書は新書ということもあり、一流の投資家の視点から見た世界を短時間で知ることができる。さらに、今後は彼の予想がどれだけあたっているかという視点でもニュースを楽しむことができるようになるだろう。そして、改めて歴史と旅の重要性を再認識することもできる。以前読んだ『砂糖の世界史』のような歴史に関する本をもっと読もうという気持ちにさせてくれ、海外旅行へ行きたいという気持ちを高めてくれた。
あえて本書を一言で述べるなら「一流の投資家の視点を知りながら、歴史と旅の重要性を認識できる1度で2度おいしい作品」だろうか。本記事では紹介しきれなかった国々やトピックもまだまだあるので、本記事を読んで気になった方はぜひ手に取って読んでみて欲しい。
最後までお読みいただきありがとうございました。本との素敵な出会いがありますように。
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